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スピーチライターがスピーチ!?の巻

スピーチライターにとって、スピーチはあくまで「書く」ものであって決して「する」ものではありません(少なくとも私にとっては・・・)。 経験としては、「書く」方はそれなりに、でも「する」方はほんの少し。ましてや「日本語でする」なんてめったにないことです。

さすがのアリストテレスも、 日本企業で働いたことはなかったハズ。
さすがのアリストテレスも、 日本企業で働いたことはなかったハズ。

今年は、なんと㈱電通パブリックリレーションズ様より、東京で日本語のプレゼンテーションをさせていただく機会を頂戴しました。そして、このことが私の人生において最も恐い体験のひとつとなりました。 もし、このブログを読んでくださっている方がその場に居合わせたなら、間違いなく「己の処方薬に頼る病んだ医者」のような哀れな私をご覧になったことでしょう。

そんなこんなで、今回は「想定外の日本語プレゼン」の機会を頂いた際に考えたことについて、皆様にもご紹介させていただこうと思います。 恐怖の日本語プレゼンをお聴きくださったのは、主に日本企業にてPR部門をご担当の皆様でした。プレゼンでは、 日産自動車㈱にて、取締役員のためのスピーチライターをさせて頂いた経験から、皆様がご所属の会社にて取締役員用のスピーチを作成される際にお役立ていただけるようなポイントをご紹介させていただきました。

当日にもお伝えしましたが、限りある時間の中で私にできたのは、このトピックについてのほんの表面をお話しさせていただくことだけでした。 アリストテレスの時代まで遡るような古いレトリックもそのひとつ。 とはいえ、今回は現代技術のインターネットにて便利なポイントをご紹介いたします。

その1)「スピーチ」とは、「話す」ものであり「書く」ものではありません

当然と言えば当然のことですが、スピーチをする時は、聞いている人々に「語りかける」ことが肝心です。 ただ単にプレスリリースを読み上げれば、「あら不思議、スピーチに変身!」なんてうまい話はありません。 下に挙げるのは、スピーチライターが実際に用いるテクニックであり、そのほとんどは、「書く」と「話す」を区別するためのものです。

その2)聞き手に語りかける

聞き手は誰かを考えます。 本当に彼らに語りかけていますか? たとえトピックが同じでも、 その対象が会社員の場合と大学生の場合とでは、話し方をどのように変えるべきでしょう。 あなたが使う専門用語を彼らは理解しているでしょうか。 そもそも、あなたが選んだトピックに、聞き手は興味を持っているでしょうか。

その3)船頭多くして、船、山に・・・

スピーチライティングの難しさ。 通常、スピーチライターは、何人ものさまざまな広報担当者とやり取りをしながら1つのスピーチを作成していきます。しかし本来、スピーチライターにとっては、スピーチをする本人と1対1で作業を進めるのが最も理想的な方法です。 実際、スピーチは、前者のやり方で作られることのほうがずっと多いものです。それでも、あえてここでは1対1が良いと主張したいと思います。

その4)自分ではない他の人が話す言葉を作る

あなたが担当する話し手は、どんなふうに話しますか。 その人は、どのような言葉や表現を好んで使いますか。 言い間違えやすい言葉、言いにくそうな言葉はありませんか。 彼らの話し方をよく聞いて観察しましょう。 (前述のポイントが重要になる理由の1つです。) このことは、スピーチに用いる言語が、話し手の母語でない時に、特に気を付けなければなりません。

その5)起承転結

これは、記事などを書くときにも共通することですが、スピーチにも、必ず導入部、中間部、完結部を作るようにします。 スピーチを上手に始め、終わらせるための効果的な方法はいくらでもあります。 中間部は、内容を注意深く練り上げ、よく考えた順序立てを行います。

その6)2000年前から使われてきたコツも使いましょう

レトリック。 レトリック。 レトリック。 輝かしい伝統の継承者になりたくはありませんか? (「3の法則」と「答えを要しない問いかけ」を用いる技法です!) もう何千年も前から使われている技法ですが、まだまだ現役、効果ありです。

その7)パワーポイントは敵!

これはまさに日本の典型的なワナ。 日本人が、ズバ抜けた視覚思考性(漢字のせい?)を持っているのか、単に話すのが苦手なのかは謎ですが、パワーポイントのページを次からつぎへと変えながら行うスピーチは、声を聞きながらスクリーンの内容も読んで理解しなければならず、とても分かりづらいものです。 視覚資料は、スピーチに合ったものを。 その逆は×。

その8)成功のために!

スピーチライターの皆さん、おめでとうございます。 これで、真に人々に語りかける、素晴らしいスピーチを書けることでしょう。 「現場で」そして「 人々の前で」。 「書く」世界にはない、 そしてインターネットにもできないこと。それがスピーチです。