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神隠しの先は沖縄 観光地コピーライティングを考える旅に出た

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Tony McNicol
WeDoJapanディレクター。日本の観光・ツーリズム、サステナビリティ、メディア分野で、心に響くコピーライティング・マーケティング翻訳をお届けします。
Okinawa scenery

2019年、新型コロナウイルスのパンデミックが始まるわずか数ヶ月前。ふとしたことで観光地のコピーライティングを考える冒険に出ることに…

この時の私に任されたのは、「泡盛」に関する22編の短い解説文を執筆するため、日本の最南端にある沖縄へ飛び、現地でリサーチを行うことでした。

泡盛はタイ米と黒麹菌から作られる沖縄の蒸留酒で、どことなく焼酎に似ていながらより深みのある土っぽい味わいが特徴です。アルコール度数は35度。日本酒が15度、焼酎が25度であることを考えると、日本の伝統的なアルコールの中でも最も強いお酒と言えるでしょう。

今回私を起用してくれた会社の編集者とともに4日間、さまざまな博物館や蒸留酒を巡り、泡盛のエキスパートたちにインタビューをし、その合間には沖縄発のもう一つの伝統 空手のことも学びました。

今回の取材は、観光庁が推進する日本各地の英語解説文を改善するという大規模なプロジェクトの一環でした。この素晴らしいプロジェクトについては以前別の記事でも紹介したので、興味がある方はぜひそちらもご覧ください。

獅子の姿をした沖縄の守り神「シーサー」
獅子の姿をした沖縄の守り神「シーサー」

沖縄の全てを1杯の泡盛で表現する

私が今回の案件を単なる「アルコールに関するライティング」ではなく「観光地のコピーライティング」と表現した理由は、泡盛という媒体を通して沖縄そのものの魅力を伝えることが目的だったからです。

執筆する解説文は非常に短く、ほとんどが1編250文字程度に収まるものばかりでした。今回の取材とコピーライティングでカバーしたトピックの一例を紹介します。

  • – 泡盛と琉球諸島のつながり、「琉球」とは何か?
  • – 沖縄の泡盛カルチャー
  • – 沖縄における祖先崇拝
  • – 泡盛がタイ米で作られている理由
  • – 沖縄の伝統陶芸「やちむん」

私が担当する多くのツーリズムライティングと同様、今回も日本や沖縄のことをあまり知らない人の立場になって考え、できるだけシンプルに伝えることにとことんこだわりました。

実は今回、私自身初めての沖縄訪問ということもあり、「この地を知らない人の立場になって考える」というハードルが格段に下がりました。これまで雑誌や他のコピーライティング案件で日本各地を回ってきたのに、どういうわけか沖縄だけは訪れる機会がなかったのです


日本酒、焼酎、ジャパニーズウイスキー… 次は泡盛?

実は最近、ツーリズムのライティングではないのですが、JFOODOのWebサイト向けに記事を執筆したときにも泡盛が話題にあがりました。JFOODOとは「日本食品海外プロモーションセンター」という、日本政府が日本食や飲料の普及促進を目指して立ち上げた機関です。

これから面白くなっていくだろうなと感じるのは、イギリスでまだほとんど知られていないお酒です。泡盛は日本の最南端・沖縄のお酒で、焼酎に似た蒸留方法でありながら、焼酎よりも強いアルコール度数とスムーズな舌触りが特徴です。熟成された泡盛はスモーキーな味わいで、今イギリスで非常に人気のあるメキシコ産のテキーラやメスカルが好きな人にうけると思います。

「ハブ酒」はハブのおまけがついた泡盛
「ハブ酒」はハブのおまけがついた泡盛(出典:Wikipedia)

泡盛のことを調べてみた

  • – 泡盛は日本最古の蒸留酒で、その起源は15世紀にまで遡る。より知名度の高い焼酎よりも歴史が長い
  • – 泡盛造りに使われる黒麹菌は、温暖で多湿な沖縄の気候に適したこの土地ならではの麹菌
  • – 泡盛は伝統的に、傷の消毒など数々の治療に用いられてきた
  • – 泡盛を3年以上熟成させたものは「古酒(くーす)」と呼ばれ、より深くまろやかな味わいになる。そしてもちろん、お値段も上がる
  • – ある古文書では、特に優れた泡盛の香りを「雄ヤギの匂い」と表現している
  • – 泡盛を嗜む際は、小さな陶器のおちょこ「ちぶぐゎー」でいただくのが伝統
泡盛を注ぐ「ちぶぐゎー」。泡盛は世界で最も小さな器で飲む酒と言われている。