英語には日本語由来の言葉がどれくらい存在するのでしょうか?もちろん、フランス語(英語全体の29%)やラテン語(29%)、ゲルマン語族(26%)を起源とする言葉と比べるとその数はわずかですが、それでも確かに日本語由来の言葉は存在していて、そういった言葉を集めるのが私のちょっとオタクっぽい趣味だったりします。
英語の中には、judo(柔道)やkaraoke(カラオケ)、tsunami(津波)など、誰もが日本語として認識している言葉がある一方、日本語からの借用語だということが知られていない、つまりかなり前に「日本語らしさ」を失った言葉たちがあります。例えば日本語の「大君(たいくん)」に由来し、「業界の大物」や「有力者」を意味するtycoon(タイクーン)がそうです。
「Honcho」はスペイン語か日本語か?
組織やグループの中で一番偉い人やリーダーを指すhead honcho(ヘッド・ホンチョ)はどうでしょうか?音の響きはスペイン語っぽく、アメリカ西部を舞台にした映画などで耳にしそうな言葉です。でも実はこの言葉、日本語の「班長」から来ており、日本がアメリカ連合国軍の占領下にあった時代に英語に流入しました。
絵文字サプライズ

最近英語に流入した言葉の中には、日本との関連付けがそこまで強くないものもあります。例えば、emoji(絵文字)という言葉と、感情を意味する英語emotion(エモーション)の響きが似ているのは、実は単なる偶然だと知っていましたか?音が似ているのでemotionに由来した言葉と思われそうですが、emojiは実は日本語で「絵で表した文字」を意味する単語です。
祭司、僧侶…それとも「ボンズ」?
それ以外にも、時間を持て余した翻訳者くらいしか興味を持たないであろう、曖昧でちょっと古めかしい日本語由来の言葉もあります。例えば私は「少し、少量」を意味するskosh(スコッシュ)という言葉がお気に入りなのですが、これは日本語の「少し」から来ています。
以前、ある僧侶が執筆した書籍の英訳を担当しました。実は彼、厳密には英語でpriest(祭司)と呼ばれる職業に当てはまるのですが、英語のこの言葉はどうしても日本の文脈ではしっくり来ません。
この本を翻訳する時、priest(祭司)とmonk(僧侶)の両方をカバーできる古き良き言葉、「bonze」(ボンズ/日本語の「坊主」に由来し、頭を丸めた人を意味する言葉)を使いたい衝動に駆られたのですが、残念ながら現在この言葉を知っている人はほとんどいません。
ハイブリッド語もあります。2言語が融合してできた、キメラのような言葉です。
例えばmoxibustion(お灸/読みは「モクシバスチョン」)という言葉は、日本語の「もぐさ(moxa/お灸に用いる植物)」と、燃焼を意味する英語combustion(コンバスチョン)の複合語です。お灸は、肌の上で乾燥させたもぐさを燃やす伝統的な治療法です。(説明から想像するより痛くない、と聞いたことがあります。)
サフラジェット発案の柔術
英語に存在する日本語すべての中で、とはいかないまでも、ハイブリッド語の中で特に気に入っているものがあります。それは「suffrajitsu(サフラジッツ)」で、20世紀初頭にsuffragette(サフラジェット/婦人参政権論者)が巧みに使いこなしたjiujitsu(柔術)を意味します。

In a snitは「スネている」?
そのほか、まわり回って英語に戻ってきた言葉もあります。例えば日本語の「引きこもり」は英語のsocial withdrawal(社会的引きこもり)を直訳したものですが、今では日本語のhikikomoriが頻繁に英語の中で使われるようになっています。
コスプレもそんな言葉の一つです。実は英語のcostume play(コスチューム・プレイ/特定の時代の衣装を身につけて演じる演劇や映画)から始まり、日本語になって英語に再流入しました。
最後に、日本語とのつながりが判然としない、もどかしい言葉もあります。先日、「in a snit」というアメリカ英語のスラングに出会いました。これは「不機嫌」とか「イライラしている」とか「腹を立てている」という意味で使われる言葉ですが、その語源は明らかになっていません。おそらくゲルマン語族からきたのでしょう。でも、このsnit(スニット)という言葉、日本語の「拗ねている」という言葉になんとなく近い響きがありませんか?特に「拗ねている」を早口で言うと…?ただの偶然でしょうか。
アメリカに移住した日系人から広まったのでしょうか。真相は今のところ知る術がありませんが、「由来がわからない」ということ自体がその言葉の魅力を一層引き出しています。






