日本には、約1300もの日本酒醸造所があります。その中で、日本人観光客の受け入れを歓迎しているところは、さほど多くありません。ましてや外国人観光客となると、本当にごく一部の限られた酒蔵でのみ受け入れているのが現状です。
ワイナリーやウィスキー蒸留所が、観光客を受け入れるのはよくあることです。格好のPRとなる上に、地域観光業の支援やその場の売り上げ貢献にもつながるからです。それなのに、なぜ、日本酒の醸造所は観光客を受け入れないのでしょうか。
ごく少数を除いて日本酒の醸造所は、観光客を受け入れるようにできていません。そこで客観的に見てみると、彼らの多くが酒樽の間を歩き回る観光客の受け入れを渋る正当な理由が見えてきます。
理由その1)醸造所は危険な場所である:濡れて滑りやすい床、高所の足場、あちらこちらにある機械類と行き交う蔵人たちの存在。
理由その2)観光客による汚染を懸念:日本酒の醸造はとてもデリケートな工程をたどるため、観光客の靴や衣類から持ち込まれたバクテリアによって、仕込中の酒を全量廃棄するような事態に陥ることが十分に考えられる。
それでも、そんな酒蔵の事情も最近は少しずつ変わりつつあるようです。先月、素晴らしい機会に恵まれ、岡山県にある酒蔵ツアーを取材することができました。 ツアーは、日本酒造組合中央会の支援を受けSake Brewery Toursにより運営されています。
当然のことながら、5日間で4つの酒蔵を巡り、数を忘れるほどの(なぜでしょう?)試飲も含まれるツアーが楽しくないはずがなく、しかも大変良い学びの経験にもなりました。ツアーで注目すべきは、日本酒がどう地域とつながっているかを知ること。そこで、岡山の日本刀鍛造、備前焼き、魚介料理についても学びました(日本酒と牡蠣も!)。
最近の統計によると、長く続く日本酒の低迷はついに底に達したものの、日本の人口減少に伴い日本酒市場も縮小の傾向にあり、人々の目が海外市場に向いているのだとか。
ただ、日本酒の海外市場は、従来の低品質高価格の輸出酒による二日酔い(?)のせいで、まだ十分なPRができているとは言い難い状況。酒蔵に観光客を呼び込んで、日本酒ファンを増やし、輸出量の拡大を図る以外にどんな良い方法があるでしょうか?
もう一つ、重要なポイントとして、「日本酒には、料理が欠かせない」ということも挙げられます。日本酒は、食事と愉しむものです。そして 地元の食材とともに愉しむことも多いものです。もちろん、その他の料理と一緒では日本酒が飲めないということではありません(最近、ロンドンで日本酒とインド料理を組み合わせたイベントも開かれたばかり)。ただ、手始めとして、地元で作られた日本酒を地元の食材とともに味わうことは、まさに理想的な体験に間違いありません。
いずれにせよ、「日本酒を味わうなら、岡山県に勝るところなし!」という体験ができました。