日本で支持される日本酒のラベルが海外市場でも受け入れられるとは限りません。日本酒が輸出の一大ブームを迎えつつある今だからこそ、新しいアイデアを試すべき時に来ているのかもしれません。
ニール・タリー氏は、ワイン業界を専門とするイギリス唯一のデザインコンサルタント、Amphora(アンフォラ)社の代表を務めています。優れたワインラベルに必要な要素や、日本国外の消費者にとってはあまり馴染みのない日本酒をラベルによってより親しみやすくする工夫について、同氏にお伺いしました。
WeDoJapan(以降WDJ):「Amphora」という社名の由来は?
「Amphora」とは、大昔、古代ローマ人たちが使っていたワインを入れるための容器のことです。当社は、ローマ時代の街、バースにあることからこの名前をつけました。
WDJ:ワインラベルは、年々どのように変化していますか?
以前は、確かに安っぽいデザインを多用し、それはそれで消費者を惹きつけるために役立っていました。しかし最近では、もう少し伝統的なデザインに立ち返っています。これはワインが人々の中に定着してきたことを反映していると思います。
WDJ:ラベルのデザインで重要なことは?
単純明快であることはとても大事です。潜在的な効果などもありますが、人々はワインのラベルをちゃんと読んでいます。したがって、情報をしっかりと表示することも必要不可欠です。
WDJ:日本酒ラベルをデザインする人に、何かアドバイスをお願いします。
市場が違えば答えも違ってくるだろうと思いますが、上を目指したいなら、真似や偽物でない本物であることがとても大切です。効果的なラベルでありながらも、日本らしさを失わないことです。
WDJ:日本酒のラベルには、どのような印象をお持ちですか?
外見は信頼できそうな感じがします。また日本からのものだということも分かります。私自身は3年半程前から中国語を勉強しているので、漢字の美しさも理解していますし、現代日本のデザインは間違いなくイギリスにおいても人気が高いと思います。ただ、「日本酒のラベル」に関してはあまりその良さが無いように思います。少しもったいないですね。
それからもう1点、残念なのはブランドイメージです。商品の外装よりもブランドで選ばれることもあります。日本酒のブランドイメージを向上させたり、消費者とブランドをつなぐことが大きなチャンスになる可能性はあると思います。
WDJ:日本酒をもっと身近感じられるように、ラベルにできることは何でしょう?
現在の消費者は以前に比べて「新しいものを試そう」という意欲に富んでいます。イギリスのスーパーマーケット大手、ウエイトローズと協力して、入門者向けワインのラベルを作成したことがあり、その時のデザインはとても大胆かつシンプルでしたが、いい加減ではなくきちんとしたものでした。伝えたいことはシンプルでも、ラベルの中にそれを上手く表現できれば効果はあると思います。
瓶にもまた強いアピール力があります。輸出市場において、日本酒の瓶を上手く使う方法を検討すると良いと思います。スピリッツは特に、ガラス瓶に素晴らしいデザインを施しています。日本酒には、瓶とラベルに統一感のないものがあるように思います。
WDJ:日本酒らしさ、本物であることを失うとどうなるでしょうか。
ここでいうデザインとは、国際的なデザインです。多くの人々に気に入られようとするあまり、結果として、とても企業的でつまらないものになってしまうことがあります。正直であることはとても大切です。私たちは、人々の共感を得る前向きかつ正確なデザインを商品に結びつけるために努力しています。